子育てコラム(45)「根深いしあわせ」

☆店主カワムラの子育てコラム☆

毎月発行しているメールマガジに連載している、
店主カワムラにによる子育てコラムのバックナンバーを紹介します。
子育ての中で、父として感じたこと、
学んだことを織り交ぜて書き綴っています。
上から目線でアドバイスと言うよりむしろ、
わが子と向き合いながら、迷ったりうろたえたりしてることを
正直に書いているつもりです。
共感したり、参考にしていただければ、さいわいです。

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2019年6月

 世の中は「根深い問題」に溢れています。

 日々報道される、暴力や強奪、破壊の背後には、「根深い」恨みや怒り、絶望や悲しみがあるのでしょう。

 「根深い問題」を取り除くことができないのなら、それらに押しつぶされないように、ぼくらを支えて、簡単にはこわれない「根深いしあわせ」というのがあってもいいと思うんです。

 困難はあるけれど、私は生きてゆこう、と思えるような、心の土台があれば、と。

 家から店までの通勤路の途中に農園があって、毎年蓮の花が咲く一角があります。

 冬から春にかけては、干からびた泥地になっているのですが、田んぼに水が張られて少し経った頃から、水面に小さな葉が浮かび始めます。

 やがて茎が立ち上がり、大きな葉が広がり、固いつぼみが少しずつ膨らんで、7月に入る頃のある朝、一斉に弾けたように、鮮やかな薄紅の花が咲くのです。

 ひと月ほどの間に、荒れ地が浄土の眺めに変わる様に、毎年驚かされます。 そして、ぼくらの目には見えないけれど、花が終わって冬を越す間、土の下では、次の夏を目指して、着々と地下茎を育てているのだろう、と想像します。

 「根深いしあわせ」というものがあるとしたら、こういうものなのではないかと思います。

 華やかな切り花の花束ではなく、静かに張り巡らされた根っこに支えられて、力強く咲く花のような。

  *

 ぼくが学ぶアドラー心理学では、人が生きてゆく目標として「自立すること」「社会と調和して暮らすこと」を挙げています。
それらを支えるのが「私には能力がある」、「人々は私の仲間だ」という信念だとされています。

 そして同時に、そんな有り様こそが、人としてのしあわせの姿なのではないか、と提唱されています。

 アドラーは、第一次世界大戦の前線での惨状を目の当たりにして、戦争の無い世界を目指すために、彼の心理学の体系を築きました。

 「私には能力がある」と感じられていれば、安易に絶望することなく、解決の道を探ることができる。
 「人々は私の仲間だ」と感じていれば、傷つけたり奪い合ったりすることなく、人の痛みは自分の痛みであり、人の喜びは自分の喜びでもある、と思って行動することができる。

 人は人の中でこそ人として存在し、生きてゆく中でのしあわせも不幸も、立ち向かうべき課題も全て、人間関係の中にある、というのがアドラー心理学の考え方で、ぼくもそれに共感しています。

  *

 人のしあわせを支える根っこというのは、いたわり合い尊重し合う人々との「つながり」なのではないかと思います。

 そんな「つながり」を育むために、ぼくらは自分のあり様を見つめ、そばにいてくれる人たちとの暮らしを、ていねいに紡いでゆくのが大切なのだと思います。

 まずは家族から始めよう。