子育てコラム(49)「たしかな『いま』」

☆店主カワムラの子育てコラム☆

毎月発行しているメールマガジに連載している、
店主カワムラにによる子育てコラムのバックナンバーを紹介します。
子育ての中で、父として感じたこと、
学んだことを織り交ぜて書き綴っています。
上から目線でアドバイスと言うよりむしろ、
わが子と向き合いながら、迷ったりうろたえたりしてることを
正直に書いているつもりです。
共感したり、参考にしていただければ、さいわいです。

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2019年10月

 先日、下の子5年生と、山登りに行ってきました。せっかく近郊に自然があるのだから、ちょくちょく出かけたいと思っているのですが、前に行ってからもう1年が経ってしまいました。

 行き先は、津市の北の端っこにある、「錫杖ヶ岳」という低山です。今回は欲ばって、自宅から登山口のある安濃ダムの辺りまでサイクリングして、ふもとに自転車を置いて、山に登ってきました。

 自転車にも登山にも絶好の日和で、楽しくてしかたがない。ずっと一緒に暮らしてはいるものの、ばたばたな毎日で、案外ゆっくり話したりする間がない。でも今日はずうっと二人で過ごせるなあ、と思いながら、ふと、
「こうやって一緒に山登りできるのって、あと何回くらいかなあ」
と尋ねてみたら、
「さあ、あと8回くらいちゃう?」
と答えてくれました。

 けれど、兄ちゃんが中学に入ってクラブを始めると、週末がそれでつぶれることが多くなって、一緒に出かけることがすっかりなくなってしまったことを考えると、下の子と山登りに出かけられるのって、せいぜいあと2、3回くらいなのではないかなあ、と思って、ちょっぴりおセンチになってしまいました。

 でも、いま感傷的になっても仕方がない、せっかく今日、気持ちの良い空の下をこうやって歩けてるんだから、いまのこの時間をじゅうぶんに楽しもう、って思い直しました。

 そのときに、改めて、なるほど、「いまを生きる」ってこういうことなんだなあ、ってしみじみ実感したのでした。

 子ども達はやがて離れてゆくだろう。でもいまはたしかにここにいてくれる。そのいまを大切にしなきゃ、って。

 人間は思考したり想像したりする能力を持っていて、それが人間を人間たらしめているのだけれど、そのせいで「いま」を置き去りにしてしまうことがしばしばあります。

 過ぎたことに対して、いつまでも悔やんだり恨んだり腹を立てたり。先々について、心配したり、恐れを抱いたり。それらで頭がいっぱいになって、「いま」のコトどころでなくなってしまう。

 でもね、ぼくらが生きているのは「いま」なんです。過去に起こったことを変えることはできないし、未来はいつも不確定だし、そもそも「明日」があるのかどうかもわからない。

 けれど「いま」はたしかにここにある。この子がここにいて、触れることができる。肌のやわらかさやぬくもりを感じることができる。

 思い通りに育ってくれてはいないし、気に掛かることも多々あるけれど、いまたしかにここにいてくれる。

 いまここにいるその子をしっかり抱きとめないと、いつまでもその子には会えない。

    *

 「将来を考える」のは美徳で、良識ある者として当然のことのように思われているけれど、ほんとうにそうなのかしら。「いま」を抜きにして、将来の心配ばかりするのって、ほんとうに生きていることになるのかしら。そのうちみんな必ず死んじゃうのに。

 「いまさえ良けりゃいいのよ」というのとは違うんです。

プランは持っていた方がいいと思うし、明日の宿題はやっといた方がいいと思う。でも、どんどん飛び去ってゆくかけがえのない「いま」の大切さを何度も思い出さなきゃ、って思うんです。

 愛することも、大切なことを伝えるのも、「いま」しかできないんだから。