子育てコラム(53)「静かに耳をかたむける」

☆店主カワムラの子育てコラム☆

毎月発行しているメールマガジに連載している、
店主カワムラにによる子育てコラムのバックナンバーを紹介します。
子育ての中で、父として感じたこと、
学んだことを織り交ぜて書き綴っています。
上から目線でアドバイスと言うよりむしろ、
わが子と向き合いながら、迷ったりうろたえたりしてることを
正直に書いているつもりです。
共感したり、参考にしていただければ、さいわいです。

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2020年2月

 受験シーズンも大詰めです。ウチにも中三の長男がいて、ラストスパートを掛けているのかどうかは知らないけれど、ともかくも試験本番を間近に控えています。

 私立高校に無事合格して少しした彼から、両親宛てにメッセージが届きました。学校から帰るなり送って来たようです。

 今日内申点が出た。公立高校、予定通りでいくか、ワンランク上げるかどうしよう。成績とか学力的にはボーダーラインだけど、担任は、私立に行くことになってもいいのなら、挑戦するのもいいかも、と言っている。今考え中。懇談までに決めるから、そのことについては話さないで、とのこと。

 今さらではあるのだけれど、多少学力が上がってきたので迷っていたようなのですが、持って帰った成績や模試の結果などを見てみると、ワンランク上げたところは、内申点的にも、学力的にもとても微妙。もしかしたら何とかなるかもしれないけれど、リスクもだいぶ高い。

 連れ合いとも相談して、こちらの希望もないではないけれど、後々、彼が「自分で選んだ」と思えるようにしよう、ということになりました。そのために口出しし過ぎないようにしよう、とも。

 とは言え、そわそわするので、翌日、高三の娘さんを持つ友人に、LINEで相談してみました。すると、娘さん本人に聞いてみてくれたようで、彼女からのアドバイスをそのま転送してくれました。

 その日の晩、彼が塾から帰ってから、きみの進学ついて、友だちに相談したら、返事をくれたのだけど、内容を伝えてもいい?と確認したうえで、アドバイスを伝えました。その上で、お父さんお母さんはどちらでもいいと思うから、もう少し考えてごらん、と言っておきました。

 国公立大を目指せ、と言われるのは、どこの高校に行っても同じ。ぎりぎりで入学した子の方が、かえって努力して、成績が伸びることある、とか、逆に、推薦で大学進学を目指すなら、無理のない高校の方が、内申点は取りやすいとか、結局はどこに行こうが本人のがんばり次第だ、とか、現役の高校生の助言は、とても参考になったようで、それ、ぼくに転送しといて、と言っていました。

 それからしばらくして、学校での懇談を控えた前の晩、彼の方から、やっぱり、元々予定してた高校を受験する、と伝えてくれました。

 いい高校に入れたらうれしいけど、それはテストで良い点とってうれしいのと同じで、そこに行きたかったわけじゃないし、成績的にもやっぱりもう少し足りないしと、すっきりした様子で話をして、あそこだったら余裕あるから、一緒に高校に行きたいヤツに勉強教えようかな、なんて軽口をたたいていました。

 難しい選択だったけれど、そんなふうに考えて、気持ちにけじめをつけたのでしょう。

 そうか、わかった、決められて良かったね、と簡単に返事しただけなのですが、内心ずいぶんほっとしました。

 そして、あれこれ口出ししなくてよかったな、と思ったのでした。

 たぶん彼は、自分で決めたのだ、と思えるし、そのことが自信にもつながるだろうし、決断に責任を持つこともできるでしょう。

 親って、つい先回りして思いついたことをぜんぶ話してしまいたくなるものだと思うのですが、時には、あえて口をつぐんで、子どもが自分で考える時間を与えながら、耳を傾けていることも大切だと思うんです。

 ことばは思いを伝えるためのものだけれど、ことばの勢いや流れに、思いが引きずられてしまうこともあります。そのためにかえって話の着地点がわからなくなることもある。

 沈黙がより多くを語ってくれることもあるんですね。