子育てコラム(72)「振り返るとき」

☆店主カワムラの子育てコラム☆

毎月発行しているメールマガジに連載している、
店主カワムラにによる子育てコラムのバックナンバーを紹介します。
子育ての中で、父として感じたこと、
学んだことを織り交ぜて書き綴っています。
上から目線でアドバイスと言うよりむしろ、
わが子と向き合いながら、迷ったりうろたえたりしてることを
正直に書いているつもりです。
共感したり、参考にしていただければ、さいわいです。

  他の「子育てコラム」はこちらから

なお、ポイント会員登録により、
最新コラムを掲載したメールマガジンを配信させていただきます。

   モバイルポイント会員「b-Happyフレンズ」大募集中!

2022年1月

 b-Cafe店主カワムラです。

 昨年の暮れは、2年ぶりに大阪の実家に帰省することができました。

 実家では毎年12月30日に餅つきをします。例年は、実家で兄が営むスポーツサイクル店のお客様たちがたくさん来て、盛大な集まりとなるのですが、今回は、世間の状況を考えて、身内だけでの開催となりました。

 一昨年は取りやめにしたので、餅つきも2年ぶりです。

 家の前にコンクリートブロックでかまどを作って薪をくべ、羽釜とせいろを乗せて餅米を蒸して、石うすと杵(きね)でつく、昔ながらの餅つきです。

 いつもは、いくらでも手があって、わいわいやっている間に終わるのですが、身内だけでやるとなると、けっこう大変だろうなあ、と身構えていました。ところが、やってみると、子どもたちが思ったよりずっと役に立って、あっけないくらいにたくさんのお餅が出来上がりました。

 ウチの高二、中一の男子二人に加え、兄の高一の息子、妹の大学一年生と高二の娘がいて、いとこたち5人が久々に顔を合わせたのでした。

 彼らに、蒸し上がった米をつぶしてから餅をつくやり方や、杵とり(手返し)を、実演を交えながら説明すると、すんなり覚えて、しまいには、子どもたち同士で、立派にやってくれていました。火の番も、次男が率先してやっていました。

 ついこの前まで、さほど手伝いもせず、つきたての餅を食べながら、その辺で遊んでいたような気がするのですが。

 声をかけ合いながら楽しそうに餅つきをしている姿を、なるほど、こうやって世代が交代してゆくのだなあ、と、眩しいような気持ちで見ていたのでした。

 ウチは、身体がモヤシのようにひょろひょろと細長く伸びる家系で、長男は中学の後半でぼくの背を追い抜きました。

 長男と4つ違いで、ちっちゃくてかわいいと思っていた次男も、急激に背が伸びて、兄ちゃんのときより先に、ぼくを追い抜きそうな勢いです。

 普段はいちいち振り返っているヒマなんかないのですが、少し時間ができて、正月の写真を眺めていたら、ほんまに大きくなったなあ、としみじみ感じたのでした。

 大きくなるのは嬉しいのですが、それは同時に、子どもとの距離が開いてくる、ということでもあります。

 最終的には、子どもを社会に送り出すのが子育てなので、当然と言えば当然なのですが、やはり寂しさはあります。

 世話を焼き過ぎない、余計な口出しはしない、とは思いながらも、ついおせっかいが過ぎて、ウザがられながらも懲りずに、子どもの周りをチョロチョロしているお父さんがぼくです。

 そんな兄弟なのですが、たまに、気まぐれに構ってくれることもあります。

 先の日曜日、昼食の後、卓球部に入った次男に、近所のスポーツセンターに練習しに行こうか、と声をかけたらすんなり乗ってくれて、一緒に出かけました。全くの初心者のぼくに、次男が、ラケットの持ち方、サーブやレシーブの仕方を教えてくれました。

 その日の夕方、ぼくがテレビで大相撲を見ていたら、長男がこたつに入ってきて、ぼくのいい加減な解説を聞きながら、最後まで付き合ってくれました。

 それだけのことだけど、ぼくにとっては嬉しい日曜日でした。

 

 ぼくが敬愛する詩人、高村光太郎の代表的な詩の一つ「道程」に、

「 僕の前に道はない僕の後ろに道は出来る」

という一節があります。

 子育ては楽しいけれど、しんどいものでもあります。そもそも、生きてゆくということそのものが、厳しい修行のようなものなのだ、とぼくは思っています。

 つらいつらいとぼやいているより、はなからそんなもんさ、と胸を張っている方が、カッコイイと思うんです。

 そして、無理難題だらけの日々を手探りでなんとか歩み続けていたら、ふと振り返って、辿って来た道のりの眺めに報われるひとときが、時折おとずれてくれます。歩き続けていたら、そんな日がきっと来ます。

 とはいえ、人生にゴールはなくて、一息ついたらまた歯を食いしばって、一歩一歩を踏みしめる日々が始まるのですが、そんなものだと思います。

 ぼくはすっかりいいオッサンになってしまいましたが、それでもやっと折り返しくらいかな、と思っています。まだまだ。

 前へ、前へ。一緒に歩いてゆきましょう。