子育てコラム(37)「引き返す勇気」

☆店主カワムラの子育てコラム☆

毎月発行しているメールマガジに連載している、
店主カワムラにによる子育てコラムのバックナンバーを紹介します。
子育ての中で、父として感じたこと、
学んだことを織り交ぜて書き綴っています。
上から目線でアドバイスと言うよりむしろ、
わが子と向き合いながら、迷ったりうろたえたりしてることを
正直に書いているつもりです。
共感したり、参考にしていただければ、さいわいです。

  他の「子育てコラム」はこちらから

なお、ポイント会員登録により、
最新コラムを掲載したメールマガジンを配信させていただきます。

   モバイルポイント会員「b-Happyフレンズ」大募集中!

2018年9月

b-Cafe店主カワムラです。

エライ目に遭いました。

3連休のまん中の日曜日、
下の子4年生と二人で山登りに行ってきました。
松阪の堀坂山(ほっさかさん)という低山で、
ふもとにある森林公園に車を置いて、
お気楽に山頂を目指したのですが・・・。

予定より時間が掛かってお昼過ぎに山頂に到着、
ストーブでお湯を沸かして
ラーメンやおにぎりを食べて一休みした後、
帰途に就きました。

急に霧が出て、
「こんなのはじめてやろ?」なんて
子どもに話しながら下っていたのですが、
どうも登りと道が違う気がする。
けれど、ルートを示す赤いマーカーテープを
巻かれた樹が先に続いているので、
それを辿りながら進んでゆきました。

やがて道らしいものが確認出来なくなり、ただの急斜面に。
ときどき足を滑らせつつも
樹にしがみつきながら下ってゆきました。

下った先は谷川になっていて、
岩場を伝って川を右に左に渡りながら、
マーカーのある樹に導かれて進んでゆきます。

先を急ぎたいのだけれど、
少し遅れてついて来る息子を不安にさせないよう、
離れ過ぎず、また落差の大きい箇所では手を貸しながら。

最初は汚れるのを気にしていたのだけど、
だんだん余裕がなくなって、
やがて服は泥まみれ、
幾度となく水にはまって靴もびしょ濡れ。

現在地を確認しようと思ってもスマホは圏外。
少し遅くなるかも、という連絡すらできない。

「もしかして、おれたち、遭難しつつあるの?」

「連休暗転、無謀登山の父子遭難」
なんて見出しが浮かんだり、
明日店を休むための段取りを考え始めたり。

けれど時計を見ると午後3:00過ぎ、
暗くなるにはまだ時間がある、
進んでゆこうと思い直して、
さらにマーカーを辿ってゆくと、
そこから15分ほど進んだところで、林道に出ました。

ほっとひと息ついてスマホを見たら、
ようやく受信圏内に。
早速マップで現在地を調べると、
車を置いた森林公園ははるか彼方、
どうやら登ったルートとは反対側に下りてしまったみたい。
ここから山すそをぐるっと10キロちょっと歩かなければ、
駐車場にたどり着けない。

やれやれ、歩いたら3時間近く掛かりそうだけど、
仕方ない、ととぼとぼと歩いていると、後ろから車の音が。

ヘルプきた〜、とばかりに手を上げて軽トラを止め、
乗っていたおじいさんに訳を話すと、
「ときどきおるんさな。もっぺん登って向こうに下りたら?」
なんて軽く言う。
「荷台にでも、ちょっと乗せてくれない?」と頼んでも、「仕事があるでな」と、ブイーンと行ってしまったのでした。

さらに歩くと民家もちらほら見えて来て、
その中の一軒の玄関先から、
年配の男性が声を掛けてきました。
息子がくたびれてしゃがみ込んでいるのを
気に掛けてくれたようです。

かれこれこういうことで、と話をすると、
ちょうど一仕事終わったところだからと、
ためらいなく車を出してくれて、
森林公園まで送り届けてくれたのでした。
「お孫さんにお菓子でも」と、
お礼を渡そうとしても、
「そんなええの、そんなつもりでやっとらへんし。ほなな」と、
帰ってゆかれました。神!

何とか自分たちの車に帰り着き、
家に向かって走りながら、
息子に「サバイバルやったなあ」と話すと、
「ほんまやなあ」って。

帰宅して、二人で早めの風呂に入りながら、
ああ、帰ってこられてよかった、
日常ってなんてありがたいんだろう、
という思いにしみじみ浸ったのでした。

ほんとは、最初に違和感を感じたときに
山頂まで引き返すべきだったんです。
なのに、また登るなんて大変だ、
ここまで来たんだから前に進んだ方がいい、
と思って、どんどん道なき道に踏み込んで行ったのでした。

結果的には大事に至らなかったものの、
「引き返す勇気」を持てなかったことで、
泥沼にはまってしまうということを、
ものすごくリアルな出来事として経験して、
思い返すたびにゾッとします。

人は生き方をもっと良い方に変えようと思えば
いつだって変えられる。
けれど、新しい生き方を選ぶと、
未知の状況に立ち向かわなければならないし、リスクもある。

それなら、多少不便を感じても、
慣れ親しんだ今の生き方を続けよう、
と考えがちです。

ギャンブルで財産をすってしまっているのに、
いつか勝って取り戻せるはずと、
さらにお金をつぎ込むのにも似ています。

「それではアカンねんぞー、
めくらめっぽうに進んで行くだけやなくて、
ときどき立ち止まって、
必要なら引き返す勇気も大事なんやでー」
と、神様(?)がメッセージをくれたような気がした一件でした。

・・・あんまり子育ての話じゃなかったですね。
でも、ぼくのハズカシイ失敗から
学んだヒントをおすそわけ、ということで。