子育てコラム(54)「そのように暮らす」

☆店主カワムラの子育てコラム☆

毎月発行しているメールマガジに連載している、
店主カワムラにによる子育てコラムのバックナンバーを紹介します。
子育ての中で、父として感じたこと、
学んだことを織り交ぜて書き綴っています。
上から目線でアドバイスと言うよりむしろ、
わが子と向き合いながら、迷ったりうろたえたりしてることを
正直に書いているつもりです。
共感したり、参考にしていただければ、さいわいです。

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2020年3月

 コロナ騒ぎで2週間ほど遅れたのですが、長男の卒業式が無事執り行われました。

 通常ならば3月初旬の卒業式後に公立高校の受験、発表という順なのですが、今年は合否発表の翌日の卒業式となりました。

 良くも悪くも結果を知った上での卒業式で、気持ち的にすっきりしているのですが、仲良くしていた友だちそれぞれの進路を知らされて、気持ちがざわついてしまったというのも正直なところ。

 枝分かれする道を、それぞれの目的に向かって歩いてゆくというのであれば、もっと素直にそれぞれの歩みを応援することができるのでしょうが、高校というのはランク分けがあまりにもはっきりとしていて、各々が道を選んだ、というより選別されたような気持ちがどこか拭えないのです。

 けれど、席に着いて、式次第に並んだ、卒業生たちの名前を眺めていると、それぞれの名前に込められた願いや想いが浮かんできて、この子達はそんな「選別」なんてものともせずに生きてゆくのだ、生きてゆくしかないのだ、と思ったのでした。

 この子たちのさいわいを祈る、という思いを持たない親たち先生たちは一人もいないはず。でも、さいわいって何?

 式辞に並ぶ、周囲の人々への感謝の気持ちを忘れず、希望を失わず、自分を信じて、というような言葉はもっともだと思います。

 でもそんな言葉がキレイゴトとしてすぐに忘れられてしまうのはなぜ?

 大人の願いが、キレイゴトとして受け流されてしまわないためには、ぼくら大人が「そう暮らす」ことが欠かせないのだと思います。

 さいわいを祈るのなら、さいわいというものが何なのか考え続けよう。
 生かされていること、ともに生きている人たちに感謝しよう。
 かんたんに絶望せずに、光の射す方を見つめよう。
 自分を信じるために、先ずは自分と向き合おう。

 かんたんに口からこぼれる言葉だけれど、我が身に降りかかるとこんなにも重くてめんどくさい。
 けれど、願いを口にするからには、その責任を引き受けるのが、子どものお手本となれるカッコイイ大人なのではないかと思うんです。

  *

 コロナ騒ぎで世の中の気分が沈んでいるけれど、大人が沈んで子どもを巻きこんでしまってはいけない。
 雰囲気に呑まれて、漠然と不安になるのではなく、踏ん張って、大人の頭で考えてみよう。

 そもそも、さいわい=しあわせってなに?

 健康で長生きするということ?
でも、病も死も、生きてゆく限り避けることはできません。

 ひとつの心配もなくぬくぬくと暮らせること?
でもそんな暮らしが続くなんてあり得ません。

 人より優位をたもつこと?
でもそんな戦いの日々のなかに平安は見つけられません。

 ぼくは、しあわせというのは、この世に居場所があるということ、さらにそれと同じように、周囲の人たちの居場所を大切に思えることなのではないかと思うんです。

 そしてそれをキレイゴトにしないために、ぼくらがそのように暮らすこと。

 自分の居場所をたしかめるために、先ずは子どもたちの居場所を守ってあげよう。

 だれかとくらべるのではなく、その子の姿をまっすぐ見つめて、手を止めてその子の声に耳を傾けよう。

 かけがえのない大切なきみであることを、わかりやすく、何度も伝えてあげよう。 いま、ここでのかかわりをいつくしもう。

 そのように暮らす中で、安心して傍にいる子どもの瞳が、ぼくらを救ってくれるのだと思うんです。

 この世には冷たい風も吹くけれど、その中で温もりを忘れずにいることが、生きてゆくということなのでしょう。

  *

 卒業式の終盤で、卒業生たちの合唱がありました。
 練習半ばで突然の休みに入ってしまい、やや自信なげではあったけれど、きれいなコーラスでした。
 何度も聞いて来たアンジェラ・アキの言葉が、あらためて深く染み入りました。

負けそうで 泣きそうで 消えてしまいそうな僕は
誰の言葉を信じ歩けばいいの?
ああ 負けないで 泣かないで 消えてしまいそうな時は
自分の声を信じ歩けばいいの
いつの時代も悲しみを避けては通れないけれど
笑顔を見せて今を生きていこう今を生きていこう