子育てコラム(59)「子どもの居場所と子育ての目標」

☆店主カワムラの子育てコラム☆

毎月発行しているメールマガジに連載している、
店主カワムラにによる子育てコラムのバックナンバーを紹介します。
子育ての中で、父として感じたこと、
学んだことを織り交ぜて書き綴っています。
上から目線でアドバイスと言うよりむしろ、
わが子と向き合いながら、迷ったりうろたえたりしてることを
正直に書いているつもりです。
共感したり、参考にしていただければ、さいわいです。

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2020年11月

b-Cafe店主カワムラです。

 だいたい毎朝、次男と一緒に出かけて、学校までの10分程の道のりを、自転車を押して一緒に歩いています。
 兄ちゃんが小学生だった頃から続けている「登校さんぽ」です。通勤は少し遠回りになるけれど、貴重なおしゃべりタイムです。

 校門に続く通りを歩いて、もうすぐ学校に着く頃、いつもすれ違うシルバーの軽ワゴン車があります。

 給食室に食材を納品している業者さんらしく、歩くくらいのスピードでゆっくりとやってきて、気づかずに歩いている子には軽くクラクションを鳴らすので、子どもらには「プップーおじさん」と呼ばれています。

 プップーおじさんの奥さんのプップーおばさんは、ときどき車に乗らずに歩いて帰ることがあります。

 今朝、そんなふうに歩いてきたおばさんとすれ違う際、おばさんが声をかけてくれました。

「大きくなったねえ、もう6年生?学校に入った頃は、こんなだったのにねえ」って。

 それだけのことなのですが、そんなに前からずっと見ていてくれたのだなあと思うと、なんだか気持ちがほっこりしました。

 そんなふうに感じるのは、自分たちのことを知ってくれていた、存在を認めてもらえた、と思えたからなのでしょう。

 大人であるぼくがそう感じるのなら、ぼくらより小さな世界に生きている子どもたちにとっては、なおさらそうだと思うんです。

 ぼくが学んでいるアドラー心理学では、人間を突き動かす根源的な欲求は「所属したい」という願いだと考えられています。

 人は決して一人では生きられないし、「自分」というのは実は、ゆらゆらと漂っていて、人との関係性の中ではじめて自分の位置をさぐることができるような、あやふやな存在です。

 そんな不確かな自分が、安心して暮らすためには、社会にうまく所属しなければならない。居場所を確保する、と言ってもいいでしょう。

 子どもたちにとっての最初の居場所を提供するのは、親としての、何より大切な仕事です。

 子どもたちは、家族に守られたその場所で力をたくわえるのですが、ずっとそこに安住しているわけにはいきません。
 最初の居場所を足掛かりにしてより広い世界に旅立ち、自分の人生を切り開いてゆかねばなりません。

 そのとき、どのような指標をもって生きてゆけばいいのか。

 アドラー心理学では、「所属している」という感じ方の内わけとして、「私は能力がある」「人々は私の仲間だ」という感覚を挙げています。

 私を取り囲む人々と私は助け合うことができ、私は人々の役に立つことができる、と感じられているのが、人として健やかな状態だということです。

 そこで、アドラー心理学の提唱する子育てでは、「私は能力がある」「人々は私の仲間だ」という二つを、子育ての目標としてかかげ、自分の働きかけが子どもをそこに向かわせることができているかどうか、常にチェックすることが提唱されています。二つだけ。とてもシンプルなんです。

 このような考え方に沿った子育ての方法を学ぶ体系的なコースもあるのですが、まずは、子どもに安心できる居場所を提供できているか、「子育ての目標」と照らし合わせて、自分と子どもの関わりはどうか、ということを考えてみませんか?