☆店主カワムラの子育てコラム☆
毎月発行しているメールマガジに連載している、
店主カワムラにによる子育てコラムのバックナンバーを紹介します。
子育ての中で、父として感じたこと、
学んだことを織り交ぜて書き綴っています。
上から目線でアドバイスと言うよりむしろ、
わが子と向き合いながら、迷ったりうろたえたりしてることを
正直に書いているつもりです。
共感したり、参考にしていただければ、さいわいです。
他の「子育てコラム」はこちらから
なお、ポイント会員登録により、
最新コラムを掲載したメールマガジンを配信させていただきます。
モバイルポイント会員「b-Happyフレンズ」大募集中!
2025年2月
b-Cafe店主カワムラです。
先日、お客様をお見送りしたあと、ホールの片付けをしていたら、本棚からはみ出ていた絵本が目につきました。
背表紙が傷んでいたので、テープで補修したついでに、その絵本を、声に出して呼んでみました。
林明子さんの「こんとあき」。保育園で働いていた頃、何度も何度も読んだ絵本です。
ぬいぐるみのきつね「こん」と、おそらく5才くらいの女の子「あき」が、こんの生まれた「さきゅうまち」まで旅をする、というお話です。
こんは、おばあちゃんから、もうすぐ生まれてく赤ちゃんのお守りを頼まれて、さきゅうまちから、あきの住む町にやって来たのでした。
やがてあきが生まれ、それから、こんとあきはずっと一緒に過ごしました。
こんは、あきのよだれで濡らされたり、はいはいで踏んづけられたり、しっぽを持って引きずられたり。
あきが、だんだんと大きくなるにつれ、こんは、だんだんと古くなりました。
ある日とうとう、こんの腕がほころびてしまいます。
おばあちゃんに直してもらうために、ふたりは、汽車に乗って、さきゅうまちに向かうことにします。
途中の駅で、お弁当を買いにホームに出たこんが、しっぽをドアにはさまれてしまう、というトラブルに遭いながらも、ふたりは「さきゅうえき」にたどり着きます。
おばあちゃんの家に向かう前に、あきのリクエストで、砂丘を見に行ったのですが、あろうことか、こんは、突然あらわれた、のら犬にさらわれてしまいます。
あきは、のら犬を追いかけますが、すぐに見失ってしまいます。大きな声で、こんを呼んでみても、返事がありません。
やがてあきは、砂にうずめられた、こんを見つけます。
あきは、すっかり弱ったこんを助け出し、背中におんぶして、おばあちゃんの家に向かいます。
暗くなってくるなか、あきは、家並みの向こうで、あきたちを待ってくれているおばあちゃんの姿を見つけました。
あきは、その胸に飛び込んで、
「おばあちゃん、こんを なおして!」
としぼり出すように言います。
ふっくらしたおばあちゃんは、ゆったりとふたりを受け止め、
「しんぱい いらないよ、あきちゃん、よくきたね、さあ、うちへ はいろうね」
と言ってくれたのでした。
ずっとこんを見守ってくれていたこんを、今度はあきが、なんとか助けようとしている。あきの成長に胸を打たれます。
保育園で働いていたころ、ぼくはこの絵本を、卒園が近くなった年長さんたちに読んでいました。
このシーンの辺りになると、あきと、目の前にいる子どもたちを重ねて、声がうるんでしまうのを隠しながら読んでいました。そして、みんなも、ほんとにおおきくなったねえ、という話をしていたのでした。
お話はもう少し続くのですが、ぼくは、どこまでも広がる砂丘を、夕日を背に受けて、こんを背負ったあきが、おそらく歯をくいしばりながら、おばあちゃんの家に向かうシーンに、いつも圧倒されます。
お話には出てこないのですが、作者の林明子さんが、雑誌のインタビューの中で、「こんの生地は、死んだおじいちゃんの古いコートなの」とおっしゃっています。
なので、こんは、おじいちゃんの、魂のようなものを受け継いでいるのかもしれません。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」というのが、こんの口ぐせです。
腕がほころびてきたときにも。
あわててお弁当を買って戻るさい、汽車のドアにしっぽをはさまれたときも、心配になって探しにきたあきに、
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。おべんとう、まだ あったかいよ」
と言います。
砂の中から助け出されて弱りきっているときにでも、かすかな声で、
あきに「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とささや続けるのでした。
この「だいじょうぶ、だいじょうぶ」というのは、気休めではなく、「あきちゃんならだいじょうぶだよ、なんとかなるよ」という、おおげさに言えば、あきを全肯定する勇気づけの呪文のようなものなのではないか、と思います。
あきがこんを救い出して、さいごの力でおばあちゃんの元にたどり着くと、おばあちゃんは、大きな「だいじょうぶ」であきを包み込んでくれたのでした。
*
もう何年も前になるのですが、午後、店で片付けをしていたら、若い女性がおひとりでいらっしゃいました。
お茶の後、絵本の棚を眺めていたので、絵本、お好きなんですか?とお声がけすると、はい、と答えてくれました。
見ると「こんとあき」を手にしていたので、それ、大好きな絵本なんです。よかったら読みましょうか、と1対1で読み聞かせをさせてもらいました。
やっぱりうるっときながら、なんとか読み終えて、女性を見ると、ぽろぽろ涙を流しているのでびっくりしました。
ぼくがうろたえていると、彼女が、
「河村先生、わたし、北口保育園にいた、Rです。私も保育士になったんです。保育園のとき、河村先生にこの本を読んでもらったの、ずっと覚えてます」
と言うものだから、ぼくももう、ぽろぽろ。
あの甘えん坊で泣き虫のRちゃんがこんなになるなんて。
そうなんだ、ありがとう、と少し話をしてからお見送りしました。
お見送りしてから、そう言えばちょっと疲れている様子だったかもなあ。もう少しお話聞いてあげたらよかったなあ、と思いました。
その後まだお会いできていないのですが、Rちゃんがいつかまた、店を訪ねてくれるのを待ちながら、それまで、こんがRちゃんに、
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
とささやき続けてくれていたらいいなあ、と願っています。
⭐︎福音館書店のサイト内に、「こんとあき」の特集コーナーがあります。 https://www.fukuinkan.co.jp/kontoaki/