子育てコラム(28)「お金で買えない大切なもの」

☆店主カワムラの子育てコラム☆

毎月発行しているメールマガジに連載している、
店主カワムラにによる子育てコラムのバックナンバーを紹介します。
子育ての中で、父として感じたこと、
学んだことを織り交ぜて書き綴っています。
上から目線でアドバイスと言うよりむしろ、
わが子と向き合いながら、迷ったりうろたえたりしてることを
正直に書いているつもりです。
共感したり、参考にしていただければ、さいわいです。

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2017年10月

 先日、子どもたちと一緒に
「亀山トリエンナーレ」という催しに参加してきました。

亀山の商店街から旧街道に掛けての道沿いにある店舗、

 家屋に、絵画や造形、前衛的なものから映像まで、
様々な作品が展示され、
それらを町歩きしながら見て回る、
というアートイベントでした。

 さほど期待していたわけでもなく、
近所だしちょっと行っておこうか、
くらいの気持ちで出かけたのですが、
行ってみるとこれがかなり面白かったのです。

 営業中の店舗もあれば、
空き店舗になっているところもある。
展示室内に「こちらにも展示があります」
という張り紙があるので、
奥に向かうと暗い通路になっていて、
物置のようなスペースを抜けたら広い部屋に出て、
突き当たりのガラス戸から街の景色が見渡せたりして。

 古いおうち大好きなぼくには
それだけでもたまらないのだけれど、
そこにアート作品が展示されて、
何とも不思議な空間ができあがっていました。

 一番印象的だったのが、
楽器店跡の店舗の2階の奥で見た映像作品でした。

 小さな部屋にパイプ椅子が8脚くらい置かれていて、
前方のスクリーンで作品が上映されていました。
入室する際に「長いので、適当に途中で外に出てもらってかまいませんので」
と声を掛けてもらったのですが、
見始めるととても面白くて、
30分弱の作品を最初から最後まで
しっかりと見せてもらいました。

 アパートのベランダで、プランターに植えた
フウセンカズラを育てていたり
ガラスの鉢でメダカを飼っていたりする
謎の主人公の日々が淡々と描かれているのですが、
ひとつひとつのショットがいちいち美しくて心地良い。

 種を植えて、それが育って実をつけ、
そこからまた種を収穫する、という、
物語とも言えない展開なのですが、
いつの間にか作品世界にどっぷりひたって、
主人公に共感して、
ずっと見ていたいような気になったのでした。

 そんな感慨を与えてくれるのは、
この映画がとても丁寧に撮影され、
緻密に構成された作品だからなのでしょう。

 ものごとに触れて、
美しいと感じることはできるとしても、
それを改めて、
自分が感じたのと同じように人に伝えるのって、
とても難しいことだと思うんです。
それを何とか形にしようとするのが
「アート」なのではないかと思います。

 そんなことを考えて、
今さらながら「ゲイジュツって、スゴイやん」と
感動しつつ、町を歩きながら思いを巡らせました。

 ひとつのアートが、ぼくを感動させたからと言って、
他の人にとっても同じとは限らない。
そうなるとアートって、
お金と結びつきにくい。

 というか、誰にでもウケるものではなく、
自分という個人の表現こそがアートなのだから、
そもそもアートと経済って、
対立するもなんじゃないの?

 それでも「芸術」に向かう人たちって
何なのだろう?
だけど芸術は必要だ。
美しいと感じる心がなければ、
人生は色あせてしまう。

 芸術家って、すごいなあエライなあ、
と零細商店の店主はクラクラしながら歩くのでした。

 生きてゆくためには、
経済的に安定していたり、
より豊かになろうとすることが
必要ではあるのだけれど、
それとは別のベクトルを持った価値もある。

 それは、美しいと感じる心だったり、
家族や周囲の人々を愛しいと思う気持ちだったり。

 福音書に
「あなたがたは自分のために、
虫が食い、さびがつき、
また、盗人らが押し入って盗み出すような地上に、
宝をたくわえてはならない。
むしろ、自分のため、虫も食わず、さびもつかず、
また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、
宝をたくわえなさい。
あなたがたの宝のある所には、心もあるからである。」
なんて言葉があります。

 芸術も愛も、お金では買えないし、
お金に換えることもできない。
だけど、それらがなければ、
なんのための人生かわからない。

 慌ただしい毎日だけれど、
せかっくの秋ですからね、

 ちょっとひと息ついて、
美しいもの、おいしいものをちゃんと味わって、
そばにいてくれる、いとしい人たちを、
ちゃんと愛しましょう(^^)