子育てコラム(112)「あんぱん」

2025年5月

b-Cafe店主カワムラです。

 この春からのNHKの連続テレビ小説「あんぱん」を熱心に観ています。

 テレビを観る習慣はほとんどないのですが、アンパンマンの生みの親、やなせたかし氏と小松愓さんの夫婦をモデルとしたドラマだと聞いて、これは観ておかないと!と思って。

 もう大学生と高校生になったウチの子たちもアンパンマンが大好きだった時期があるし、ぼくが保育園で働いていた頃にもさんざんお世話になりました。

 今でも多くの子たちがアンパンマン大好き!の時期を通ってゆくように思います。

 東北の震災のとき、ラジオでは、子どもたちを勇気づけるべく、アンパンマンのマーチが何度も流れていて、ほんとうに、アンパンマンが「いま行くから!」と、彼らの元に飛んで向かっている姿が目に浮かぶようでした。

 「アンパンマンのマーチ」の「なんのために生まれて なにをして生きるのか」という歌い出しを耳にするたびに、ぼくはどう生きているだろうか、と問われている気がします。

 とりあえずは命をおびやかされることもなく、飢えることもなく、エンタメが溢れていて時間はいくらでもつぶせるし、深く突き詰めて考えることをしなくても、何となく生きていける世の中なんだけれど、そんな日々に「それでええのん?」って。

 もちろん、ええわけないと思うんです。

 過ぎた時代のように、身分に縛られることもないし、厳格な宗教とか、圧倒的な軍国主義を強要されることもない。そんな頃と比べると、いまは、ものすごく自由だと思うんです。

 けれど、そんな自由な時代の中で、人々がみんなしあわせに暮らしているのか、と言うと、どうもそうは思えない。

 大人の幸福度が低かったり、子どもたちの自己肯定感が弱かったり。

 自ら命を絶ってしまう方も多いし、「誰でもよかった」と人を傷つける事件も後を絶たない。

 そんなだから、やっぱりみんなが「なんのために生まれて なにをして生きるのか」を、ちゃんと考えんとアカン、って思うんです。

 「あんぱん」のドラマの主人公、嵩(たかし)の育ての親である叔父が、若き日の嵩に何度も、この問いを投げかけます。

 嵩は自分の進むべき道がなかなか見つけられない。そんな中、あるとき叔父は嵩に、

「なんのために生まれて、なんのために生きるか。それは人を喜ばせることや」と伝えます。

 「人生はよろこばせごっこ」というのは、やなせたかし氏自身の言葉でもあります。

 人間が一番うれしことはなんだろう?ということをずっと考えてきて、「ひとはひとをよろこばせることが一番うれしい」ということに思い至った、と著書の中で記しています。

 これは「なにをして生きるのか」という問いへの具体的な答えにはなっていないけれど、「何のためにそれをするのか」という大きな方向性を示してくれています。

 「人生はよろこばせごっこ」

 ぼくはこの言葉には深く共感します。人は、誰かのために生きる時にこそ、自分を生きることができるのだと思うんです。

 ぼくが学びを続けているアドラー心理学にも、同様の思想が流れています。アドラーは、子育てを通じて、戦争のない世界の実現を願ったのでした。

 ひとびとの幸せを思い、自分に出来うることで手を差し伸べる。時には勇気を持って自分の身を投げ出す。やなせ氏がそんな生き方の象徴として生み出したのが「アンパンマン」なのでしょう。

 「なんのために生まれて なにをして生きるのか」 

 答えは見つかりそうで見つからないのかもしれません。

 けれど、子どもたちが自分の人生に立ち向かうために問いかけてあげたいし、ぼくらも自分自身に問い続けている背中を、子どもたちに見せてあげたいと思います。